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「そんでさ、ある日、まなちゃんを手放した、 ってぐちゃぐちゃな顔してここに来たんだよ。」 「…」 「めちゃくちゃに、馬鹿みたいにドラムたたいてさ、 そんで言うんだ。まなちゃんを壊したくないって」 「…」 「まなちゃんが他の男にその…触れられることさえ、 許せない自分がやばいって、 あいつ、まじでさバカじゃん? その気持ちの持って行き方がわからなかったんだと思う。」 なんで…。 そんなこと…。 「例えば距離を置いたとして、 その間にまなちゃんが前に進むことも怖いから、 見守ることもできないし、 だからと言って、自分が束縛しちゃうのは違うんじゃないかって バカだから、こういう結果になったんじゃないかな」 あぁ、私が呂玖を苦しめてたんだ。 呂玖は一生懸命考えてくれてたのに。 「まぁ、普通に考えたらやばいやつだけど、 あいつは今もずっと、まなちゃんが最優先事項なのは、 間違いないよね。」 何も言えない。 「ごめん、こんなこと俺が言ったらいけなかったよね」 首を横に振る。 「でも、俺にとってもあいつは大事なやつだから、 まなちゃんに誤解されたままなんて…、無理」 最後はちょっとかすれた声だった。 「ほんとしんみりさせちゃってごめん」 しばらく3人で飲んで、 あたりさわりのない話をして、 そのあとで、私たちはお店の前で別れた。 「まな大丈夫?」 「うん、ちょっとしんどいかな」 そっと背中をなでてくれる知紗子。 「今日、ちょっと実家帰るわ、まだ終電あるし」 「そっか、じゃ駅まで一緒に」 そう言って、知紗子は駅まで付き合ってくれて、 改札で見送ってくれた。
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