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「あ、お母さん?急だけど今日実家(そっち)行っていい?」 「いいけど…、なんかあったの?」 実家に電話して、泊まりたいことを伝える。 今までこんな急に変えることなかったから、 少し戸惑っているみたい。 「うーん、何となく?」 「そ、いいわよ」 それでも、深堀せずに迎え入れてくれる。 家族ってありがたいなぁ。 「ただいまぁ」 実家の安心感。 変わらないのがいいのか悪いのか、 ここには、いろんな思い出がそのまま残っている。 もちろん、呂玖との思い出も…。 お風呂に入って、麦茶を飲んで、 テレビを見ていると、 耀太が来た。 「あ、まな。」 「おう」 「今日帰ってきてたんだ」 「うん、近くで高校の友達と飲んでたんだ。」 「そっか」 そう言って、耀太も麦茶を飲む。 「ねぇ」 「ん?」 「あのさ、」 なんだか歯切れ悪くなってしまう。 「なんだよ」 「…、呂玖ってさ、まだたまに来たりするの?」 「…」 私をじっと見る耀太。 「…、くるよ」 ぽそっと答える。 「そか…」 テレビはお笑いから、情報番組に替わろうとしている。 「呂玖変わりない?」 「うん、まぁ、仕事充実してるみたいで、 ちょっと痩せたかも」 「そか…、」 最近よく見るCMが、流れる。 「まだ、…」 耀太はテレビの画面を見つめたまま口を開く。 「まだ、吹っ切れてないよな?」 振り返って私を見る。 一瞬にして、呂玖の笑顔がたくさん、 私の脳から心によみがえってくる。 「俺、わかんないんだよ」 「…」 「呂玖君も、まなのこと、全然忘れてないっていうか… 二人の間にどんなことがあったのかわかんないけど、 恋人同士なんて部外者にはわからないことがあるんだろうけど、 幼馴染だしもっと複雑なのかもしれないんだろうけど、 二人は…」 少し途切れる耀太の言葉。 「そんなに…そんなに簡単…だったの?」 きっと、耀太なりに色々心配したリ、 気をもんだ結果、私の軽率さを責めることも、 呂玖の行動を責めることもできずにいるもどかしさもあるはず。 それを一生懸命、伝えようとしてくれている。 耀太の頭に軽く手を置く。 「ありがと」 昔から、弟の耀太より、 幼馴染の呂玖のほうが、 私にとって手のかかる存在だった。 耀太より、呂玖を優先させてきた。 耀太なりに、色々感じることもあったろうし、 複雑な気持ちもあったろうな。 今隣で下唇をかみしめている青年は、 今までのいつよりも私の弟だった。 私のこと、呂玖のこと、 すごく気にかけてくれて、ありがとうね。 私は、改めて家族の暖かさに触れて、 決意を新たにした。 会って話したい。 だって、私にはやっぱり、 呂玖が必要だから…。
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