14

2/4

20人が本棚に入れています
本棚に追加
/45ページ
呂玖がお茶を買ってくれて、 二人でベンチに座る。 少しあいた距離が、 とてつもない二人の距離を感じさせた。 「…まだあのアパート住んでるの?」 「ううん、引っ越した。」 会話がうまく伝わらない。 「呂玖は、まだ家にいるんだね」 「うん」 「…彼女とか…できた?」 「…」 しまった。 会話のセレクト失敗したかも。 「いないよ」 なんだか冷たく聞こえた。 「そか…。」 「まなは?どうして今日帰ってたの?」 「あ、知紗子と近くで飲んでてさ、 実家(こっち)のほうが近かったから」 「そう。」 話したくて呼び止めたのに、 話題ないとか終わってる。 すぐそばに呂玖の手がある。 なのに触れることすらかなわない。 こみあげてくる涙を必死で耐える。 「呂玖、まだドラムもやってるんだって?」 「…え?なんで…」 「あ、ごめん、たくや君に会ってさ、 ちらっと聞いたんだよね」 「…」 「また、聞きたいな。呂玖のドラム」 「…」 「かっこよくて、好きだったんだよね」 言ってから『しまった』と思った。 「好きとか簡単にゆうなよ!」 「…!そんな」 呂玖の気迫に押されてしまう。 そんな簡単じゃないのに…。 ほんとに好きで…。 やばい、もう、瞳が決壊してしまった。 こんなとこで泣いたら、呂玖に迷惑かける。 誰か来たら困るし、 何より呂久に嫌われちゃう。 「はぁ」 舌打ちでもため息でも、 今の私には残酷なものでしかなかった。 でも、気持ちがいっぱいいっぱいになって、 思わず漏れてしまう。 「私は、呂玖が告白してくるよりもずっと前から、 ずっと呂玖が好きだった」 そりゃ彼氏がいた時もあったから、 言い訳にしか聞こえないかもしれないけど、 呂玖との関係を幼馴染と自分に思い聞かせていた。 今ならわかる。 自分の気持ちを押し殺して、 ずっと幼馴染でいようと思ってた。 まさか、まさか呂玖に好きって言ってもらえるなんて思わなかったから。 でも、付き合ったら、恐れてたことが起こってしまった。 呂玖に距離を置かれてから、 こんなんだったら、 ずっと幼馴染のままでいたかったのにって、 呂玖のことを恨んだりもした。 「今だって、ずっとずっと…」 呂玖のことが気になるけど、 怖くて見れない。 「呂玖しか、好きになれない」 はは…。何言ってんだろう。 拓哉君にいいように言われて、 勘違いしちゃったかな? 呂玖は今付き合ってる人がいないだけで、 彼女作ろうと思えば、簡単にできる。 顔だけじゃない。 呂玖はバカだけど、単純だけど、 純粋で優しくて、素直で強い。 それに、私という狭い世界なんて、 もう特別でも何でもない。 ほかにいくらでも、 呂玖に見合う女の人がいる。 「…で、どうしたいわけ?」 あまりにも冷たい言葉に、 急に現実に戻る。 こんな悲劇のヒロインぶって、 恋愛漫画みたいなセリフはいて、 急に恥ずかしさがこみあげてきた。 「ご、ごめんなさい」 慌てて涙をぬぐう。
/45ページ

最初のコメントを投稿しよう!

20人が本棚に入れています
本棚に追加