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「俺は」 呂玖がポツリと言う。 「俺は、小さい男だよ」 「え?」 「たとえ、どんな状況であったとしても、 他の男にあんな風に抱き留められた、 ましてや二人きりでいたまなのこと、 信じてやれなかった。」 だ。 「永濱と付き合ったまなを、軽蔑したよ。」 中学の時だ。 「手つないだのかな?キスしたのかなって、 中坊だったから、いろんな想像して、 心の中で何度も汚いやつらだって罵った。」 「…」 「大学行って一人暮らし始めたの、 むちゃくちゃ心配で、 大学生なんて勝手なイメージだけどやりまくってるんじゃないかって、 毎日むしゃくしゃしてた。」 「…」 「もしかしたら、まな、 あいつとなんかしてんじゃないかって、 いらない想像したら、 付き合ってく自信なくなって、 俺ばっかがまだこの世界にこだわって、 大人になれないって思って。」 日の光に照らさた呂玖のきれいな輪郭と対照的に、 表情は少し歪んでいた。 「まな、覚えてる?」 「ん?」 「最後に会った日、俺まなを襲いかけたよね?」 「…あぁ」 「あんときまな、震えてたじゃん」 「え?」 そんな、私ふるえてたの? 「あ、もしかして無意識か?」 「…」 「正直あんときも、""ダメなのかよって、 思って、引いたんだよね。」 あぁ、もう先輩とはやったって思われてたんだ。 なんか、かなしい。 「俺って、そういう男、 まなは汚れてるって思ったら耐えられないような、 ちっさい男なんだよ」 そう言って、呂玖は鼻で笑った。 「じゃ、そういうことだから」 立ち上がる呂玖。 「…‼待って」 「まだ、なんかある?」 「…」 「まな、」 ヤダ。 ここで手放したら、 もう、ほんとに終わってしまうかも。 それ、耐えられる? 何度自問自答しても答えは、同じ。 呂玖なしなんて耐えられない。 立ち上がっても、呂玖と目線は会わないけど、 それでも呂久の前に立つ。 「私、やっぱり呂玖が好き」 「だから、俺は…」 「私のこともう1ミリも好きじゃない?」 黙ったまま少し下を見る呂玖。 「もし、ほんの少しでも、 私のこと嫌いになれない気持ちが残ってたら、 あの…。」 緊張して、のどがつまる。 「私にチャンスをちょうだい」 それに、答えがもらえるかわからない。 でも、もう引けない。 引きたくない。 「私は、呂玖が好きだから、 あきらめたくない。 そんなに半端な思いじゃない」 例えほかの女がいたとしても、 負けたくないし、 比べ物にならないくらい、 私は好きを積み重ねてきた。 どんな呂玖だって、全部受け止められるだけの、 根性もある。 呂玖への思いの年季と覚悟が違うんだよ。 手の中のペットボトルが小さくクシャっと音を出す。 思わず強く握りしめてしまった。 「もう、…まな」
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