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「飲みに行こう」
私たちにとって同棲って何の問題もなかった。
当たり前のような日常が過ぎて、
しばらくしたころ、呂玖が言った。
「明日休みでしょ?」
クライアントとの打ち合わせだとかで、
めずらしくネクタイを締めてながら、
私に聞いてくる。
ていうか、ネクタイてこずりすぎじゃない?
視線だけで私に助けを求める呂玖のそばまで行って、
ネクタイを締めてあげる。
私より長く社会人やってるのに、
やっぱりなんかかわいい。
「うん、休みだし、外で飲むの楽しみ。」
酔うと、普通にバカ丸出しになる呂玖も面白いし(笑)
「じゃあさ、仕事終わったら、○○のそばの…」
「あ、そこってバーみたいなとこ?」
そうだ、
いつか拓哉君に会ったあのバーだ。
「知ってるの?」
「うん、前に知紗子と飲みに行ったことある」
「そっか、じゃわかるよね?」
「うん、私誰かさんと違って物覚えいいので」
「いやいや俺ももう大人だからね」
そういうけど、私にとってはかわいいままだ。
ニコニコ笑っていると、
ダンっ!と突然壁ドンされる。
目の前が呂玖でいっぱいになる。
「今かわいいとかおもったっしょ?」
こくりとうなずいてしまう。
その色気のある表情に、ぞくぞくする。
こんなにも一緒にいるのに、
いまだにこの表情にはなれない。
私も大概、呂玖の沼に沈んでいる。
そんな私の思惑に満足したのか、
ふっといつもの呂玖に戻って、
「まだまだ、まなのこと夢中にさせちゃうから、
今夜楽しみにしててね」
そう言って、おでこにキスして、
楽しそうに出かけて行った。
いつもより、仕事がはかどる。
「お疲れ様です」
「あれぇ、今日は定時?」
先輩に声かけられる。
ほんとに本気の定時。
何なら定時待ち(笑)。
そりゃ聞かれるよね。
「はい、ちょっと予定がありまして」
「なんか嬉しそう、彼氏?」
“彼氏”と人から言われるとなんか照れ臭い。
「あ、はい、まぁ」
「いいわねぇ」
そんな会話をして、
会社を出る。
メイクも直したし、
不自然じゃないくらいのドレスアップをした。
まぁ、呂玖は普段の私も知ってるから、
おしゃれしたらすぐわかっちゃうんだけど。
それでも、久々のデートだ。
嬉しさは隠せない。
同棲したりしたら、
新鮮さはどんどんなくなっていくかもって思った。
確かに新鮮さは減るのかもしれない。
でも、気持ちは全然色あせない。
わたしだけかな?
でも、呂玖も私への気持ちは変わってないと思う。
気持ちの新鮮さは毎日更新されている。
「ヤッたら呂玖の束縛激しくなてない?」
知紗子にダイレクトに言われて、恥ずかしくなる。
確かに、彼女目線で見ても、
呂玖は初めてした夜から、
甘さが倍増している。
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