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「いらっしゃいませ」 お店のスタッフに声をかけられ、 軽く頭を下げる。 お店の奥に目をやると、 「まな!」 とステージのほうから、呂玖の声がする。 ステージの前のテーブルには何人か客がいる。 よく見ると知った顔も何人かいる。 高校の時の同級生だ。 みんなスーツが決まってた社会人になっているけど、 やっぱり変わらない。 一気に気持ちが高校に戻る。 すると、 「じゃ、始めるよ」 とステージから拓哉君の声がした。 「まな、こっち」 知紗子に呼ばれて急いで彼女の隣に行って、座る。 そして、落ち着いてステージを見て、 …!!! 驚く。 なんとステージには高校の制服を着た、 軽音部のメンバー。 ドラムセットの奥にも、 の呂玖がいた。 「今日はスペシャルステージへようこそ」 「ちょっとギリギリOKかな?」 拓哉君と呂玖が、自分たちの服装を見て、 苦笑いする。 「いや、かなりきついっしょ?」 ホールからヤジが飛んで、笑い声がもれる。 「いや、気持ちは変わってないんで」 呂玖の一言で、みんな笑うけど、 なんか私は照れてしまう。 呂玖はがっつり私を見ている。 「なんかドラムのほうから熱い視線が痛いんで」 拓哉君の言葉にまた笑いが起きる。 「早速始めていきます」 ポロンとギターの音がもれる。 「聴いてください、More」 どこどんっ! 軽快なドラムの音とともに、 懐かしい曲が奏でられる。 呂玖の髪が乱れて、 激しく音をたたき出し続ける。 スティックを回しながら、 にやっと不敵に笑う。 シンバルの音と一緒に、 私の心臓もはじけそうになる。 からだの奥から、甘酸っぱい気持ちが沸き上がる。 全身が熱くなるのを感じる。 かっこいい—。 どうにもならないほど、惹きつけられて、 堕ちていく。 呂玖のドラムは、どうしてこんなに、 つやっぽくて、エロいんだろう。 周りに人がいるのに、 抱かれている気もちになってしまう。 どんどんとトロトロに溶かされて、 我慢できなくなりそう。 「最後の曲になりました。」 そう言って、奏でられる、バラードは、 高校時代には聞いたことのない曲だった。 スローな、リズムに呂玖をじっと見つめる。 あぁ、いいなぁ、 制服姿もそうだけど、 やっぱり呂玖のドラムは最高だ。 バカだけど、どうしようもなく— かっこいい…。
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