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「たっだいまぁ」 アパートの鍵を開けて、 誰もいない部屋に、呂玖が上機嫌で言う。 「お帰り、お疲れ様」 呂玖と一緒に部屋に入りながら、 私は答える。 きっと満足のいく演奏だったんだろう。 ギュっと私を抱きしめる。 高校時代から変わらない呂玖の香り。 なんか制服だと、ほんとに高校に戻ったみたい。 そんな、余韻に浸ってると、 ふいっと顎を上向かされて、 深く口づけられた。 「…ん、ふ」 「ん、まな」 合間で私のなめを呼ぶ呂玖は、 確実に大人の呂玖なのに、 何だろう、悪いことしてるみたい。 「ちょ、ちょっと待って」 そう言って、急に呂玖は、寝室に言って、 すぐに戻ってくる。 そして後ろ手に隠していたのを、 私の目の前に出す。 「何これ?」 クリーニングのカバーされた、それは、 まぎれもなく私の制服。 「まなの制服」 「いやそれは見たらわかる。 なんでってこと」 なんでかちょっと照れたような顔して、 「俺の制服取りに実家行ったらさ、 りみちゃんが、"まなのも持ってったほうがいいよ"ってさ、 制服でイベントやるからって如月家から持ってきてくれて…。」 はぁ、もう、りみちゃんてば! 「で?」 「?」 「これどうするの?」 まぁ、わかってるけど一応聞いてみる。 「どうって…、着てくれるよね?」 ですよね。もはや決定事項だよね。 「いや」 ちょっと意地悪言いたくなる。 「え?なんで?」 なんで?って、聞くの? 「だって、俺も着てるし、せっかくだし」 ほら、その顔。 かわいい顔して、懇願しないでよ。 まぁ、着るんだけどさ。 いや、正直ちょっと着てみたい(笑)。 「ちなみにだけど、着てどうするの?」 ヤダ、私、何期待してるんだろ。 「いや、二人でコスプレ?」 無言で、寝室に行って、無言で、着替える。 うん。まだいける(笑)。 そう思って、呂玖のいるリビングに戻る。 私の姿を見て、ぱぁっと明るくなって、 かけよってくる。 「はい、着たよ」 「いいね、変わってない」 そう言って、眺めている。 満足げ。 でも、それだけ? 私は、呂玖の制服姿と、 さっきのドラム演奏で、 気分が高揚しているのか、 無駄にドキドキしている。 いけない。 呂玖は純粋に懐かしんでるだけなのに、 大人の私は、なんかいろいろ妄想しちゃってる。 不純な思いをかき消すために、 「もう、恥ずかしいから、着替えよ?」 という。 「えぇ」 子供みたいに、すねる呂玖。 「ねぇ、俺のドラム、どうだった? よかった?」 急に真面目な声で聞いてくる。 「あ、うん、高校生に戻ったみたい」 「ほんと?あの頃より上達したんだよ」 そっか、たまにあの店に行ってるって、 拓哉君言ってたもんな。 「ねぇ」 ふいに距離を詰めてきて、 後ろから抱きしめられる。 呂玖の 体温、息遣い、香り。 全部に支配されてしまう。 「ちさちゃん言ってたのほんと?」 「え?」 「俺のドラム聴いたら、とろけて抱かれたくなるって…。」 「!そ、それは…。」 「前に宅も言ってた。」 耳に呂玖の息がかかる。 「まなは、俺のドラムをコウコツの表情で見てるって」 「え?」 「コウコツって、とろけそうなってことでしょ?」 ヤダ、私そんな顔で見てたの? 自分でも、耳まで赤くなってるのがわかる。 「うれしいよ」 チュ 首筋に呂玖の熱を感じる。 思わずぴくッと なる。 「あぁヤバ、まなマジでかわいい」 制服の裾から、 呂玖の手が滑りこんでくる。 期待していた感覚に、体が反応してしまう。
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