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中学生になるまで、私たちはなんの変りもなく過ごした。 中学生になると、お互い交友関係もさらに広がったし、部活があったりで、 あまり話すこともなくなった。 それでも、幼馴染であることはいろいろと付きまとってくる。 『』とうちの両親は言うけど、 ませてるとは?要するに生意気、とか大人びてるってことらしいけど、 どうなんだろう? 男子は、全然子供だ、と当時の私は感じていた。 ケンカとか下ネタばっかの話をしてたり…。 みんな同じ事やってるのに、それでも呂玖は一定数女子からの人気があった。 「かわいい」というには身長もどんどん伸びてしまったけど、 勉強はともかく、運動神経が良くて、明るくて、女子からも男子からも人気は高かった。 呂玖は、そういうの気にするほうじゃないけど、なんだかいつも中心にいるような気がした。だから、何となく私は距離を取ってしまっていたんだけど、 呂玖は、保育園のころと全然変わらず、何かあると 「ねぇまな」 と犬みたいに懐いている。 ちょっとした優越感と、何人かの女子の冷たい視線を感じながら、中学生活をおくっていた。 それでも、自分の中に芽生えてきていた呂玖への気持ちを、無意識に胸の奥へ押しやって、気づかないふりをしていた。 中二の夏休み前、 同じ吹奏楽部の永濱(ながはま) 誠司(せいじ)君と二人で楽器を片付けていた。彼とは同じパートだったこともあって、同学年の男子の中では仲良くしていたほうだったと思う。物静かで優しい人で、呂玖や、耀太とは違うタイプの人だったけど、私的には好感度高かった。 「廊下にも、クーラーあったらいいなぁ」 カギを職員室に返しに行きながら、暑さのあまり心の声が漏れてしまう。 「はは、確かにね。」永濱君は、そう言いながら水泳部を見て、 「水泳部の特訓はいやだけど、プールはうらやましいかも」 と言った。 「確かに」私も同意する。 「でも、やっぱクーラーの聞いた図書館がいいかも、まぁ勉強はいやだけど」 「如月は、『図書館』って感じじゃないよね」と冗談めかして永濱君が言う。 「ひどいなぁ、でも確かに、図書館じゃなくても涼しいとこならどこでもいいかも」 そんなことを話しながら、いつものように二人で笑いあっていた。 職員室に鍵を返して、学校を出る。 永濱君とたわいもない話をしていると、外水道のそばを通った時、 「まなぁ!」 と聞きなれた声が聞こえた。呂玖だ。 「もう帰るの?」 「うん、午後はるみちゃんと買い物行く約束してるから」 「ふーん。きをつけてな」 と言って汗と水で濡れた髪の毛を犬みたいにブルブルしてから、大きく手を振ってきた。 「ほんと、サッカー部って少年のままの人が多いよね」 永濱君に視線を戻しながら、私はそう呟く。 「永濱君が、とっても大人に見えるよ。」 と言って笑った。"そんなことないよ"とか言うかなと予想してたのに、 永濱君は、まったく違うことを口にした。 「如月も、吉仲(あーゆう)のがタイプなの?」
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