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「え?」
永濱君の茶色がかった瞳が、今までにないくらいに真剣に私を見つめていた。
なんだかドキッとして、何も言えないでいると、すぐにいつもの永濱君に戻った。でも、話題は変わらない。
「いや 前から気になってたんだけど、如月と吉仲って、つきあってるのかなって?」と照れ隠しのようにして、聞いてきた。
「え?い、いや…。」
「あぁ 変なこと聞いてごめん」
気まずい空気を察してか、永濱君は頭をかきながら、冗談めかして言う。
「なんか、女子が噂してるのちょっと聞いちゃって…、吉仲って、なんかあるとすぐ如月に声かけてくるだろ?だからその、噂になってるみたいで」
永濱君にしては、下世話な話題だな、とか見当違いなことを考えてしまった。
それほど混乱していた。確かに、女の子たちから聞かれることはあった。
『呂玖君と付き合ってるの?』とか、時には心無い言われ方もした。
『あんたと吉仲君とじゃ釣り合わないってわからない?』なんて…。
でも、私と呂玖は、幼馴染。それ以上でもそれ以下でもない。
自分に言い聞かせるような気持ちも混ざって、そう答えてきた。
でも、男女関係には興味もなさそうな、ノーマークの永濱君から、
そんなことを聞かれて、少なからず、動揺してしまった。なんだか自分の中の何かを引きずり出されそうな、気がして…。
「はは、私と呂玖は、幼馴染だよ。まぁ呂玖にしてみたら私のこと『おかん』と思ってるかもしれないけど。」平常心平常心。いつもどうりの受け答えで、いつも通りの私を取り戻す。
でも次の、永濱君の言葉で、完全に着地のバランスを崩してしまう。
「よかった。吉仲が相手じゃかなわないし。」
そういって永濱君はにっこりと笑った。
そして、いつになく真剣な顔でまっすぐ私を呼んだ。
「如月、」
「はい」思わずこわばってしまう。
「俺、如月のことが…好きだ。」
はい?
「よかったら、付き合ってほしい。」
こ、これって、『告白』
生まれて初めての出来事に、思考が追い付かなかった。
「如月?」
思考も、体も止まってしまった私に、ちょっと慌てている、永濱君。
「あ、突然ごめん。でも俺、ずっと言いたかったんだ。」
「あ…あの、えっと」
「すぐに答えなくていい。気もち決まったら、連絡頂戴」
そっと、肩に添えられた永濱君の手に、心臓が早く動き出す。
「は、はい」
「じゃまた、週明けの部活でね。」
そういって、永濱君は校門へと小走りで帰っていった。
校庭の隅に一人取り残された私。
『如月のことが、好き』
さっきの永濱君の言葉が、脳内で繰り返す。
ふと我に返る。
「あ、るみちゃんと約束してるんだった。」
私も急いで校門を出た。
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