3

2/5

20人が本棚に入れています
本棚に追加
/45ページ
「え?」 永濱君の茶色がかった瞳が、今までにないくらいに真剣に私を見つめていた。 なんだかドキッとして、何も言えないでいると、すぐにいつもの永濱君に戻った。でも、話題は変わらない。 「いや 前から気になってたんだけど、如月と吉仲って、つきあってるのかなって?」と照れ隠しのようにして、聞いてきた。 「え?い、いや…。」 「あぁ 変なこと聞いてごめん」 気まずい空気を察してか、永濱君は頭をかきながら、冗談めかして言う。 「なんか、女子が噂してるのちょっと聞いちゃって…、吉仲って、なんかあるとすぐ如月に声かけてくるだろ?だからその、噂になってるみたいで」 永濱君にしては、下世話な話題だな、とか見当違いなことを考えてしまった。 それほど混乱していた。確かに、女の子たちから聞かれることはあった。 『呂玖君と付き合ってるの?』とか、時には心無い言われ方もした。 『あんたと吉仲君とじゃ釣り合わないってわからない?』なんて…。 でも、私と呂玖(カレ)は、幼馴染。それ以上でもそれ以下でもない。 自分に言い聞かせるような気持ちも混ざって、そう答えてきた。 でも、男女関係には興味もなさそうな、ノーマークの永濱君(かれ)から、 そんなことを聞かれて、少なからず、動揺してしまった。なんだか自分の中の何かを引きずり出されそうな、気がして…。 「はは、私と呂玖は、幼馴染だよ。まぁ呂玖にしてみたら私のこと『おかん』と思ってるかもしれないけど。」平常心平常心。いつもどうりの受け答えで、いつも通りの私を取り戻す。 でも次の、永濱君の言葉で、完全に着地のバランスを崩してしまう。 「よかった。吉仲(あいつ)が相手じゃかなわないし。」 そういって永濱君はにっこりと笑った。 そして、いつになく真剣な顔でまっすぐ私を呼んだ。 「如月、」 「はい」思わずこわばってしまう。 「俺、如月のことが…好きだ。」 はい? 「よかったら、付き合ってほしい。」 こ、これって、『』 生まれて初めての出来事に、思考が追い付かなかった。 「如月?」 思考も、体も止まってしまった私に、ちょっと慌てている、永濱君。 「あ、突然ごめん。でも俺、ずっと言いたかったんだ。」 「あ…あの、えっと」 「すぐに答えなくていい。気もち決まったら、連絡頂戴」 そっと、肩に添えられた永濱君の手に、心臓が早く動き出す。 「は、はい」 「じゃまた、週明けの部活でね。」 そういって、永濱君は校門へと小走りで帰っていった。 校庭の隅に一人取り残された私。 『如月のことが、好き』 さっきの永濱君の言葉が、脳内で繰り返す。 ふと我に返る。 「あ、るみちゃんと約束してるんだった。」 私も急いで校門を出た。
/45ページ

最初のコメントを投稿しよう!

20人が本棚に入れています
本棚に追加