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土日の間に、友達やるみちゃんたちにも相談したけど、
何となく返事できないままでいた。
まだ、『彼女になる』なんていう実感がわかなくて、さらに、運動部ほどじゃないけど、結構人気のある永濱君と付き合うなんて、いいのか私?と考えてしまった。
「私としては、まなが誰かの彼女になっちゃうのは残念だけど…ね」
「うん、でも永濱君もいい子そうだし、付き合っても大丈夫じゃない?」るみちゃんとりみちゃんは、言ってくれた。
週明けから部活始まったけど、永濱君はいつも通りに接してくれて、返事を迫られることもなかった。
「永濱君」
八月の頭に、私は部活帰りの永濱君を呼び止めた。
よく考えたら、断る理由なんて一つもない。そう思ったのだ。
「あの、この前の返事なんだけど」
そういうと、永濱君は体ごと私に向き直って、やさしい表情を作ってくれる。
「えっと、私なんかでよかったら、お付き合いしてください」
そういうと、永濱君は
「え?マジで?やったぁ」と満面の笑顔になった。それを見て、あぁオッケーしてよかったと思った。あんなに自信満々そうに見えたのに、こんなによろこんでくれた。
「よろしくね」
「あ、うん」
こうして私は人生初めての彼氏ができた。中学生のお付き合いなんて、ほんとにかわいくて、一緒に帰ったり、休み時間に話したり、図書館で一緒に勉強したり。それでも毎日が楽しかった。
永濱君は、中学男子とは思えないほど、紳士的で優しかったし。
冬休みに入ったある日。
図書館に行く約束をしていたけど、雪が降ったのを心配して、永濱君がうちに迎えに来てくれた。
うちの親に挨拶して、私を待つ間、玄関に通された永濱君。
タイミングがいいのか悪いのか、そこに呂玖が来る。
チャイムも鳴らさないで、ガチャっと玄関を開けて、
「ようたぁ、ゲームするぅ」と言って、入ってくる。
「あ…永濱」永濱君に気づいた呂玖はあろうことか
「いらっしゃい」と言った。
「あ あぁ…」
呆然とする永濱君を気にもしないで、
「まなぁ、永濱待ってるよぉー」
と二階に上がってきた。
その様子を、永濱君は呆然と見ていた。
「あのさぁ」
図書館の帰り、永濱君がそっと口を開く。
「ん?」
「吉仲って、いつもあんな感じなの?」
我が家にとっては日常。
でもやっぱり彼女の家にあんな風に自分以外の男が上がり込んでたら、面白くないよね。
「ごめん、」さりげなく言った言葉が、あまりうまくなかったみたい。
「いや、人のうちのことなのに、口出してごめん。」
しばらくの沈黙。
「あの、呂玖はほんとに幼馴染で、」
「わかってる。」
この日はこのまま話せなかった。
年末は、恒例で吉仲家、如月家でカウントダウンをする。
いつもは呂玖とふざけあっていたのに、永濱君への罪悪感というか、なんだか複雑な気持ちで、楽しめなかった。
そんな私を、呂玖もそっとしておいてくれた。
初詣は、一緒に行こう。と約束していた。
永濱君は、迎えには来てくれず、現地集合となった。
それから何となく、永濱君とすれ違うことが多くなった。
大人びているとはいっても、やはり中学生の気持ちは、そんなに強くない。
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