3

4/5

20人が本棚に入れています
本棚に追加
/45ページ
「まなぁ」 そんな私たちの関係にお構いなく、呂玖は相変わらず、私と接してくる。 もう、空気読んでよ。そう思うのに、むげにできない自分がいやになる。 季節はやがてバレンタインとなるころ。 すれ違ってはいたものの、私は初めての彼氏に贈るチョコレートに、 思案していた。 そんな時— 「茉那」 友達の知紗子が、話しかけてきた。チョコのレシピ本を見る私を覗き込んで、 「チョコつくるの?」 と聞いてきた。 「うん一応ね、」 「こんな時に言いづらいんだけどさぁ」 ほんとに、歯切れの悪い感じで、知紗子が私を見る。 「ん?」 いつもと違う雰囲気の知紗子に胸騒ぎを覚える。 「永濱君…。昨日吹部の一年生の女子と一緒に帰ったらしいよ。」 「え?」 昨日は永濱君、用事あるから一緒に帰れないって…。 「その子の同中の子に聞いたんだけど、その子、永濱君にあこがれて、吹部はいったみたいで、あんたとのことも結構聞いてたみたいだよ」 そんな…。 「冬休み明けから、永濱君と茉那(あんたたち)なんかぎくしゃくしてたでしょ?『隙あり』って思ったんじゃないかなぁ。」 少し頭が真っ白になる。確かに私は、永濱君のことが好きで好きで付き合い始めたわけじゃない。でも、部活でずっと一緒にいて、付き合ってからはどんどん彼のこと好きになって、そばにいて居心地よかった。 「こんなこと言いたかないけどさ、永濱もくんもそうだけど、あんたもちょっと良くなかったんじゃない?」 え? 「何があったか知らないけどさ、永濱君多分、吉仲のこと気にしてたんじゃないかなぁ。」 呂玖…? 「あんたらにとっては、幼馴染でじゃれてるだけかもしれないけど、吉仲はあのルックスだし、あんたは特別って感じ醸し出してるし」 「そんな…!だって呂玖は耀太みたいなもんで…」 「はぁ」知紗子は少しため息を吐いて、 「でも、永濱君にしてみたら、嫉妬の対象になるでしょう?あんたはほっとけないだけでも、彼氏がいる女子にあんだけ普通に絡んでいく吉仲も、それを強く拒否らないあんたも、ダメなんじゃない?」 そっか…。私永濱君を知らないうちに傷つけてたんだ。 「こんなこと言うのはあれだけど、一応、一年生のことは伝えなきゃと思ったから…」 知紗子は私の頭をポンポンしてくれた。男前…。 「ありがとう知紗子。私、ちゃんと気持ち伝えてみる。バレンタインだし。」 「うん。仲直りできるといいね」 『イマドキの子はませてる』 お母さんのその言葉は、その通りで、 私の思うより、中学生の恋愛事情は複雑でこじれていることを、 数日後、私は思い知ることになる。
/45ページ

最初のコメントを投稿しよう!

20人が本棚に入れています
本棚に追加