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「まなぁ」
そんな私たちの関係にお構いなく、呂玖は相変わらず、私と接してくる。
もう、空気読んでよ。そう思うのに、むげにできない自分がいやになる。
季節はやがてバレンタインとなるころ。
すれ違ってはいたものの、私は初めての彼氏に贈るチョコレートに、
思案していた。
そんな時—
「茉那」
友達の知紗子が、話しかけてきた。チョコのレシピ本を見る私を覗き込んで、
「チョコつくるの?」
と聞いてきた。
「うん一応ね、」
「こんな時に言いづらいんだけどさぁ」
ほんとに、歯切れの悪い感じで、知紗子が私を見る。
「ん?」
いつもと違う雰囲気の知紗子に胸騒ぎを覚える。
「永濱君…。昨日吹部の一年生の女子と一緒に帰ったらしいよ。」
「え?」
昨日は永濱君、用事あるから一緒に帰れないって…。
「その子の同中の子に聞いたんだけど、その子、永濱君にあこがれて、吹部はいったみたいで、あんたとのことも結構聞いてたみたいだよ」
そんな…。
「冬休み明けから、永濱君と茉那なんかぎくしゃくしてたでしょ?『隙あり』って思ったんじゃないかなぁ。」
少し頭が真っ白になる。確かに私は、永濱君のことが好きで好きで付き合い始めたわけじゃない。でも、部活でずっと一緒にいて、付き合ってからはどんどん彼のこと好きになって、そばにいて居心地よかった。
「こんなこと言いたかないけどさ、永濱もくんもそうだけど、あんたもちょっと良くなかったんじゃない?」
え?
「何があったか知らないけどさ、永濱君多分、吉仲のこと気にしてたんじゃないかなぁ。」
呂玖…?
「あんたらにとっては、幼馴染でじゃれてるだけかもしれないけど、吉仲はあのルックスだし、あんたは特別って感じ醸し出してるし」
「そんな…!だって呂玖は耀太みたいなもんで…」
「はぁ」知紗子は少しため息を吐いて、
「でも、永濱君にしてみたら、嫉妬の対象になるでしょう?あんたはほっとけないだけでも、彼氏がいる女子にあんだけ普通に絡んでいく吉仲も、それを強く拒否らないあんたも、ダメなんじゃない?」
そっか…。私永濱君を知らないうちに傷つけてたんだ。
「こんなこと言うのはあれだけど、一応、一年生のことは伝えなきゃと思ったから…」
知紗子は私の頭をポンポンしてくれた。男前…。
「ありがとう知紗子。私、ちゃんと気持ち伝えてみる。バレンタインだし。」
「うん。仲直りできるといいね」
『イマドキの子はませてる』
お母さんのその言葉は、その通りで、
私の思うより、中学生の恋愛事情は複雑でこじれていることを、
数日後、私は思い知ることになる。
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