忙しさと恋と、愛と

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 「おはようございます、林涼香です。きょうはお忙しいところ、見学を受け入れていただきありがとうございます。よろしくお願いします」  とにかく笑顔! お客さまに向ける顔と同じ顔で、岐阜店の店長にあいさつをした。    「はじめまして、店長の石川です。こちらこそ、きっと他のみんなにも刺激になると思いますので、よろしくお願いします。朝礼のときにみんなに紹介しますね」  「ありがとうございます」  フロアに行くと、私が来るというのはみんな承知していたのか、気さくに挨拶してくださる方がほとんど。  「おはようございます、長瀬(ながせ)琴美(ことみ)といいます。よろしくお願いします」  「お話うかがっています。きょう一日よろしくお願いします」  「花村さん、あーえっと今は松原さんでしたね。松原さん、結婚したの全然言ってくれなかったんですよ。怒ってるって言っといてください」  長瀬さんはニコニコ笑顔のかわいらしい人。中身はおじさんだって朱音は言ってたけど、とりあえずおじさん感はない。  「あ、本店からの見学の人?」  透き通るような声がして後ろを振り向くと、どっかの女優さんみたいにきれいな人。美人さんの多い店だなここは。  「はじめまして、矢野(やの)貴子(たかこ)といいます。よろしくお願いします」  「林涼香です、よろしくお願いします」  「朱音ちゃんからわたしの話って訊いてる?」  「あ、はい。あの松原課長の……」  「そうそう、姉です」  私は練習の成果を生かして、次々と会話を重ねていった。うん、滑り出しはかなりいい感じ。
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