好意をむけられて

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 その時のことを思い出しながら、リフレッシュルームで休憩していると、あとからやってきた一平が話しかけてきた。  「涼香さん、あした休みでしょ? 予定は?」  「ぼーっとする予定」  「じゃあ豊田(とよた)のわらび餅屋さん行きません? お取り寄せだと何ヶ月もかかるけど、お店に行けばイートインで食べられるそうですよ」  「あ、それってやまと屋さん?」  「そーです、そーです。なんだ知ってたんなら話早い。じゃあ明日8時にマンションの駐車場集合で」  「ちょっと待って! 私、あしたはぼーっとする予定なんだから。忙しいの」  「えー、じゃあ俺だけで行こうかな。あそこ山奥だから車以外にいく手段ないんですよねー、できたてのわらび餅、とろとろでやわらかくて、黒蜜きなこが絶品らしいんですよ。あーあした楽しみ」  うう……、一平のやつ。私が車を持ってないのをいいことにそんな風に揺さぶって……。  食べ物に目がない自分が悔しい。とろとろ柔らかわらび餅、食べたいに決まってる。  でも、今回はやめとこう。  だって、前回はじめて一平と出かけた時が楽しすぎたから。  一緒にでかけたのは、もう2ヶ月も前。一平は東栄町(とうえいちょう)の茶そばやさんに連れて行ってくれた。美味しいおそばにほっぺを落とし、新城(しんしろ)市のキャノピーウォークで体を動かして遊んだ。  久しぶりに体を動かしたから、あちこち痛くなったけど、終始げらげら笑って楽しく過ごした。  帰りの車の中で、18回目の告白をされた。一平が告白する、私があわあわするという構図がすっかり出来上がっていて、毎回のパターン通り。  それでも、今回違ったのは、マンションに帰ってきてから優奈の夢を見たことだった。    
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