4798人が本棚に入れています
本棚に追加
一平とはじめて一緒に遠出した日の夜。ソファに座って、スマホで撮った写真をスクロールする。楽しかった余韻に浸っていると、ものすごい勢いで罪悪感に苛まれた。
優奈とかわした約束の場面が、何度も何度も頭の中で繰り返される。
あまりのことに目を瞑ると、悲しそうな優奈がわたしの前にあらわれた。磔にされたように身動きが取れなくなる。
『私は一平くんと、もうでかけられないのに、よくそんな風にでかけられますね』
『先輩、あの約束は嘘だったんですか?』
嘘じゃない、うそじゃないよ。優奈、ごめん、悲しいよね、苦しいよね。私が一平を好きになることなんて絶対ないから。ぜった、い……。
バッと目を覚ますとソファにバタンと突っ伏して泣いていた。
夢……。でも、そうだよね。優奈はもう、一平とは出かけることはできない。怒るのも当たり前だ。
もう、一平とどこかに一緒に出かけるのはやめよう。仕事のあと、飲みにいくのも行かないようにしよう。
肥沃な大地の奥底で生まれて、確実に育ったその感情。それがいまにも芽生えようと、土を押し上げている。
その感情を、私が持つのは許されない、あの約束が嘘になってしまう。まるで呪いのようなその感情の芽を、ひたすら摘み取ることを繰り返す。
少しずつ、一平が特別になっていく。それがとても怖かった。
最初のコメントを投稿しよう!