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「どうします? あした」
はっとして我に帰ると、コーヒーを落としながらこちらを見る一平のにやりとした顔。わたしはすっと立ち上がって、床に目を落とす。
「やっぱりいかない。用事思い出したから」
そう冷たく言い放ち、ぷいっとしてリフレッシュルームを出ようとすると、パッと目の前に一平が立ちはだかった。
「涼香さん、どうしたの? いつもとちがうね」
「なんでもないよ。もう一平とは遊びに行かないし、食事にもいかない。ほっといて!!」
「……なんで」
しまった言いすぎた……。そう思ってももう遅い。一平はいままでに見たことないくらい、悲しそうな顔。いまにも涙があふれそう。違う、違うの、こんな顔させたかったわけじゃない。
私には優奈との約束があるの、だからそれを守るためには、一緒にいちゃだめなの。だって、このまま一緒にいたら……。私はぐっと下唇を噛んで、目を床に落とした
「優奈のこと、気にしてるんですか?」
私は弾かれたように顔を上げて、カチンと固まる。
「涼香さん、きょう仕事終わったら連絡ください。ちゃんと話しましょう」
きょう私は遅番で、一平は早番。なんでこんなに私のことがわかるの? こんどはこっちが泣きそうになる。
「……わかった」
そう小さくつぶやいて、リフレッシュルームを出る。なんともいえない気持ちに、心の中がもやっとした。
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