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「ねえ、涼香さん。優奈ってどんな子でした?」
「えっと、華奢で、サラサラのストレートでアイドルみたい──」
「じゃなくて、性格」
「性格? 芯があって、まっすぐで、人の幸せを心から喜べるって感じかな……」
「俺も同じ、そう思います。その優奈が、自分がもうこの世にいないいまの状況でですよ? 涼香さんが俺を好きになったとして、怒ると思いますか? 憎しみで心をいっぱいにすると思いますか?」
──ああ、そうか。
「自分に置き換えてもそうです。もし俺が優奈の立場だったら、自分との約束で、大切な人が悲しむところを見たくありません」
「……一平」
「約束を忘れろとは言いません。でもそれで涼香さんが、苦しまなくてもいいと思います」
「……うん」
ぼろぼろと涙が出てくる。
わたしの中に芽生えたその感情を、これ以上摘まなくてもいいんだ。
その赦しが、心の中を温かく柔らかく包んでいく。
「一平、ありがとう」
「ほんと、ひどい人」
なんで? そう首を傾げる。
首傾げないでください、我慢できない。と、一平はわたしの頬を両手で挟んで、くいっと真っ直ぐに戻した。
「少しは俺のこと、好きになってくれてます?」
そう言われてビクッと肩が震える。
「ま、ま、ま……」
「ま?」
「まだ、わかんな……い」
私が耳まで真っ赤にしてそう言うと、はーっと息をついて、項垂れる一平。だって、ほんとだもん!!
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