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ほら、こっちへおいで。私が今から、おもしろい話をしてあげよう。
小さな魔法使いの話さ。
さあ、はじめるよ。
寒い寒い北の国に、世界でただひとつの魔法の町「モルガナ」がある。
遠い遠い昔から、魔法使いたちがくらす、ひみつの町。魔法使いたちは、町からは全く出ずにくらしている。
この町のことや魔法使いたちのことを、世界中のだれひとりとして知る者はいない。
そんな場所が、いったいどこにあるのかって?
森の中、ひみつの出入口から入るのさ。それ以上は教えられないよ。
モルガナは、古い歴史が色づく小さな町。
レンガづくりのさんかく屋根の家がところせましと立ちならび、家々のえんとつからは白いけむりがたちのぼる。
太陽が町を見守る時間、みんなは家で眠りにつく。
そして太陽が森のふわふわベッドで眠るころ、この町は目を覚ます。
家々やお店に光が灯り、大通りは行きかう人々でにぎわう。光るブタに、音の鳴るリンゴ。笑うネコ。歌う花。
町には魔法と光があふれ、いつもたくさんの笑顔があった。
いつからだろうか。この町から、魔法が消えていったのは。
なぜなのか、だれも知らない。
ひとり、またひとりと魔法が使えなくなり、気づけば大人で魔法を使える者はいなくなっていた。子どものころは魔法が使える。しかし、成長するにつれて、魔法の力が体から消えていく。
だれもが魔法を使えていたのは、もう100年前の話だ。
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