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おどろいてふりむくと、ドアの前におじいさんが立っていた。
「イオラおじいちゃん!」
「あら、こんばんは。イオラさん」
彼は、仲良しのご近所さん。105才の、元気なおじいさんだ。チャロアのことを、本当の孫のようにかわいがっている。
「チャロアが元気か気になって、会いに来たよ」
イオラおじいさんはやさしくほほえむと、昔のことを話し始めた。
「わしが子どもだったころは、この町には魔法があふれていた。子どもも大人も、みんなが当たり前のように魔法を使えた。魔法を使って商売をする人がほとんどだった。でも、いつからか、大人は魔法が使えなくなっていった。わしも大人になってしばらくたってから、魔法が消えてしまった。飛ぼうと思っても空を飛べないし、魔法の使い方がわからなくなってしまったんだ……」
話しながら、イオラおじいさんはさみしそうに笑っていた。
「魔法が使えなくなった大人たちは落ちこんで、自信も希望もなくしていった。子どもたちも、いつか魔法が消えることを知って、がんばることをやめた。そうやって人々の魔法の力は弱くなっていき、町からはにぎわいも光も消えた。今ではすっかり、暗い町になってしまったよ」
「そっか。だから、みんなは元気がないんだね……」
イオラおじいさんの話を聞いて、チャロアはうつむいた。
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