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【うん⁉】
A字型のオブジェに絡みつく、キラキラと淡い光を放つイルミネーション。
その周りで、手を繋ぎながら歩く人たち。
私と彼の間には、近くて遠い距離があった。
彼は、いつも車道側を歩く。
離れすぎたり、曲がり角を曲がるたびに、クイクイと私の袖を引っ張ってくる。
でも、相変わらず目を合わせてはくれない。目が合うたびに、耳を赤くして逸らされる。
(きっと、何か話してもまた、『うん』で返されるんだろうなあ……)
「今日の夜、時間ある?」
「うん」
「おしゃべりしたい」
「うん」
「約束だからね!」
「うん。……うん⁉」
「どうかい! 先に帰ったら勝ち!」
「あ、待て。ずるい!」
彼に微笑みながら手を振り、私は急いで家に帰った。
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