【うんっ!】

1/1
前へ
/5ページ
次へ

【うんっ!】

「好き好き好~き、好~き好き、愛してる♡」  私は、心臓をバクバクさせながら歌う。声、震えてないかな? 「好き好き好~き、好~き好き、愛してる」  負けず嫌いの彼も、なんだかんだで歌い続ける。  言葉を聞くだけで胸中に幸せが(あふ)れて、暖かい気持ちが私を優しく包む。  このまま、このまま時間が止まればいいのに。 「好き好き好~き、好~き好き、愛し、て、る……」  歌っている内に悲しくなってきて、私はハッキリと歌えなくなっていた。 「俺もだ」 「──⁉」 「歌……詞、違うよ?」 「うん」 「私から、かってたんだよ?」 「勝たれてないし俺は負けてない」 「わた、わたし、わがままで卑怯な……んだよ?」 「うん。それでも好きになったんだ。付き合ってください」 「は、い……」 「そこは、『うん』だろ」  彼の笑い声が、心底楽しそうに私の耳を包む。 「うんっ!」  私は、運が尽きないように祈りながら答えた。    『うん』が口癖の彼と私 了
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加