6人が本棚に入れています
本棚に追加
【……うん】
「……うん」
「でね、そのあと莉子がって……聞いてる?」
「……うん」
「じゃあ、何の話してたか言って」
「……うん」
目も合わせずにスマホをいじる彼と、口をつぐむ私。
私・速水 結菜は、ファーストフード店の一席で、拗ね始めていた。
クリスマスが近づいているせいか、周りでは恋人たちが談笑している。
友達同士の私達が、なんだか場違いな気がしてきてしまう。
私は、残ったパンケーキにプラフォークを刺して、口へと運ぶ。
すると彼も、すっかり冷めた残りのポテトを、つまんで食べ終えた。
「そろそろ帰ろ?」
「……うん」
(私もゲームのキャラクターだったら、夢中になってくれたのかな?)
なんて、どうでもいいことをぼんやり考えていると、
「あ、俺がやるから」
彼はそう言ってトレイを掴み、ゴミを箱の中に押しやり、箱上に置く。
そうして私に合わせたような歩幅で、少し先の階段を降り始める。
同じ身長になった彼に、
「ありがと」
私はちいさく、呟いた。
「うん」
優しいのか冷たいのか、不思議な彼。私はどうして、彼を好きになってしまったんだろう。
最初のコメントを投稿しよう!