雪だるまがとけるまで

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雪だるまがとけるまで

 その男は「愛」というものを知りませんでした。 「愛」に飢えていた男はまだ「愛」を知らぬままたくさんの罪を犯し、そして若いうちに死んでしまいました。短く、冷たい人生でした。  男を気の毒に思った神様は、その男を雪だるまに変え、第2の人生を与えました。そうとはいっても、その男はたくさんの罪を犯してきたので、雪だるまに変えたことは男にとって褒美でもあり、罰でもあるのです。  雪だるまの人生なんて、すぐに溶けて終わってしまうじゃないか!と思うでしょう。いえ、そうではありません。  この雪だるまが誕生した国では1年中雪の降り続ける、溶けることのない所なのです。では、一生溶けることなく、ずーっと永遠に雪だるまのままなのでしょうか?いえ、それは「愛」を知った時に初めて内から溶けるのです。  けれども「愛」や「温もり」を知らない雪だるまは年を越すごとに、半ば諦めかけていました。永遠にこのまま過ごすことになるのではないか…と。それは気が遠くなるほど辛く、虚しいものでした。
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