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母に大反対されたが、ピアノを辞めた。
永治と貢とバンドを組んで、キーボードを担当した。
永治と貢は元々幼馴染で、二人とも兄貴の影響で早くから楽器を始めていた。
永治はベースで、貢はドラム。
初めて聴いた時は良く分からなかったが、俺がキーボードでギターパートを弾きながら形にすると…よく分かった。
安定のリズム隊。
俺たちはすぐにボーカルとギターを募集して、ライヴに出るようになった。
だが…所詮15歳。
ライヴに出ても、自己満足の後にやってくるのは、羞恥心と落胆。
ライヴ音源を聴いては、のたうちまわった。
「…高校入ったらさ、ちゃんと本気で歌えるような奴探そうぜ。」
永治の意見はもっともだった。
当時は人前で歌を歌うのは恥ずかしい。と、誰もが思っていた。
誰か…
俺たちのバンドで、人前でも臆することなく堂々と歌ってくれないかな…
…できればヴィジュアルも良くて…
…おまけに、上手ければ申し分ない。
…ステージングなんかも…良ければなあ…
と、だんだんと贅沢になっていった俺たちに。
高校一年の時、運命の出会いがやって来た。
音楽屋でピアノの試し弾きをしていた俺に。
「おまえ、いくつだ?」
いきなり、偉そうに声をかけて来た男がいた。
「…16。」
と答えた俺に、そいつは真顔で。
「ピアノ、上手いな。おまえのピアノで歌いたい。どこかで一緒に何かやらないか?」
そう言った。
俺は何回も瞬きをしたと思う。
なんて言った?
おまえのピアノで歌いたい?
今まで、そんな事…一度も言われた事ない。
それにしても、歌いたいって事は…ボーカリスト。
見た目は…全然文句なし。
同性である俺が、少し体を退いてしまうほど…
近付かれると照れくさかった。
ただ…その、高原 夏希。
学生服が似合わない。
見た目、日本人に見えないし。
とりあえず、永治と貢と俺の三人でやっている練習に誘った。
ロックバンドだと言うと、少しテンションが下がったように見えた高原 夏希も。
一曲演り終えると、目をキラキラさせて言った。
「俺をメンバーにしてくれ!」
「マジか!!OKだよなあ!!」
永治がすっげー喜んだけど…
…見た目で喜んだよな?
これなら、女の客が来るって。
歌は聞かなくていいのか…?
おい。
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