300から66への手紙

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 少年は唇を噛みしめ、睨みつけるように真正面を見つめている。その横顔は、自分と衣鶴のどちらにも似ていた。栄次は、そっと少年に近付き、頭を撫でてやった。片手におさまる小さな頭は、驚くほど手になじんだ。まるで、ずっと前から知っていたかのような感触だった。  この子は本当に俺の息子なんだな。心のどこかに残っていた疑いが消えていく。栄次は手を頭から肩にやり、傍に寄せた。少年は抵抗しなかった。  こんなに暖かいのに、死んでいるんだな。それがどうにも不思議で、やるせなかった。 「たかゆき! ちゃんと立ちなさい!」  突然後ろから怒鳴り声がして、少年が驚き、後ろを振り向いた。栄次も何事かと思い、目をやる。すると、三十代くらいの母親の足元で、幼稚園児くらいの男の子が座り込んでいた。 「いやや。だっこー」 「あかん。ちゃんと立ち。立たんとおいてくで」 「いややー」  男の子は母親の足にしがみ付き、駄々をこねだした。少年はその様子をじっと見つめている。表情は凍りついたように、微動だにしない。 「どうした?」
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