300から66への手紙

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 少年は腕を大きく開き、笑顔を見せた。だからといって「はい、そうですか」となるはずがない。まさか、生まれて初めてみる幽霊が鹿に乗っているなんて想像もしていなかった。というより、幽霊をみるなんて思ってもみなかった。それもこんな真っ昼間に。 「だからさあ、そんなに怖がらないでよ。僕、子どもだよ」  少年はそう言って、鹿から飛び降り、近づいてきた。 「もしかして、なにか勘違いしてない? 僕、ただの幽霊じゃないよ。お父さんの子どもだよ」  言っている意味がわからない。どういうことなのだ? 「だから、お父さんの子どもだよ。本条栄次の息子。ちなみに、お母さんは衣鶴。でも、九歳で死んじゃったんだけどね」 少年はため息をつくように言うと、一枚の写真を渡してきた。そこには、満面の笑みを浮かべる栄次と衣鶴、そして少年が写っていた。 「六歳の誕生日に家族で遊園地に行った時の写真なんだ。てか、お父さん、やっぱり若いね。それに痩せてる」
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