何か裏切られたような気がして……

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何か裏切られたような気がして……

『夢に向かって走り出せ!!』  ドンッと貼られたポスターを見てため息を吐く。 「夢ってどっちデスカー?どこ行きゃいいの?」  そこに問いかけてみても返答はない。  自嘲気味に笑って俺は空を見上げた。  澄んだ青い空に、暖かい日差しを届けてくれる太陽。 「……そこは空気読んでどんより曇った先の見えない薄暗い感じじゃね?」  呟いても何一つ変わることはない。  冬の連日冷え込んだ空気を暖めるような穏やかな晴れ間。  間もなく高1の冬休みを迎えるのにモヤモヤを抱える俺は迎えるクリスマスも正月も何となく楽しみにはできない。  やっと終わった受験にホッとしつつ、今年は思いっきり遊んでやろう!!と思っていた春の俺に何と言えばいいのか。  繰り返される模試にうんざりして、「勉強!」と言われる親の声にイラついて、やたら友達の点数は気になって……。  これで高3まで受験からは解放されると思っていたのに配られた進路希望調査の紙。  もう迫られた進路の選択。  ぼんやり文系の進学だとは思っていた。でも、それは数学がどうやってみても嫌いだからだ。 「夢なんて……」  ポロリと口から零した言葉で自分が泣きそうになる。  先は見えない。  周りの戸惑いも見せず進んでいくその後ろ姿を見て、俺はどうしたらいいかさえも考えられなかった。
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