凄ぇな

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凄ぇな

 部屋に入るとかばんを投げ捨ててそのままベッドに転がる。  さっきコンビニではとりあえずの肉まんを咥えただけで腹も満たされていないのに空腹も感じなかった。  起き上がって課題や予習をやる気にもなれない。  目を閉じても何か落ち着かなくて俺はそのままベッドから降りると、スニーカーを履いて外に出た。 「百瀬?」  歩いて近所のグラウンドに足を踏み入れていた俺が呼ばれて振り返ると、ポンとボールが飛んできてとっさに右足が反応する。 「まだサッカーやってる?」  蹴り返すと、そいつはボールを蹴り上げてそのままリフティングを始めた。  首を横に振って俺は一定のリズムでブレることもないそれをただ見つめる。 「だよな。大会とかで見かけねぇもん」  笑うそいつは同じ中学で同じサッカー部だったうちのエースだ。  眞野(まの)はポーンと高くボールを跳ねさせるとそのまま少し離れた位置にあるゴールめがけてボールを押し込む。  蹴った瞬間のその音も威力もあの頃の比ではなかった。 「すっげぇな」  思わず呟くと、眞野は笑いながらこっちを向く。 「んー?そりゃ、朝から晩までずーっとボール蹴ってるからな。お前らが勉強してる間も走って頭ん中サッカーだけだし」  そうか、こいつは中学の時点でもうしっかり将来を見据えていたんだ。
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