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眞野はスポーツコースのある私立の高校に進学したことを思い出す。
「そんな毎日サッカー漬けかよ」
笑うと、眞野はしゃがんでからゆっくり立ち上がって膝を伸ばした。
「んー?朝練やって午前中授業やったら午後は授業なくて部活!」
「マジか」
「いーだろー」
言いながら眞野がゴールへ走って行く。
そこからボールを出して手を上げた。
「百瀬!」
暗くなってきたグラウンドにボールを蹴り上げる音が響く。
「ちょっ!マジ、フザけんな!」
足を出してトラップはしたものの、足が痺れていた。
「くっそ痛ぇな」
笑って走ってくる眞野にボールを出すと、眞野は後ろ足でボールを蹴り上げてからトンと頭の上に乗せてピタリと静止する。
「……サルか?」
「めっちゃ練習してんだよ」
「だろうな」
その練習量を認識しつつため息が出た。
「何?サッカーに未練でも出てきた?」
「いいや……部活とかガチはもういい」
「じゃあ、何?」
頭のボールをトントンとリフティングしながら眞野は楽しそうに口元を綻ばせる。
「……お前、サッカー好き?」
「もちろん!」
「いいな……お前ははっきり将来が見えてて」
ボールの音が止んでハッとした。
スルリと出てしまった言葉はしっかりと眞野の耳に届いていたようで、ボールを手に持って真剣な顔をしている眞野を俺は見れなくて俯く。
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