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「俺はさ……サッカーしかないんだよ」
言いながら眞野はまたスポーツバックからボールを出して抱える。
「何言って……」
「お前らみたいに勉強できねぇし、サッカーに全て賭けてるからダメだったら……って退路はねぇの」
笑って立ち上がると眞野はまたすぐにリフティングを始めた。
足先、膝、首の後ろでピタリと止めて背中を転がしつつ後ろ足で蹴ってまた足先にボールは戻ってくる。
これだけできればサッカーに賭けるのもわかる……とは気軽に言えない。
確かに才能はあるかもしれないが、練習量はきっと想像以上だろう。
昔からこいつは努力の天才でもあったから。
「百瀬はさ、今、悩んでるかもしれないけど……ある意味何にでもなれるじゃん?」
ボールに目をやったまま眞野が微笑んで俺はただ首を傾げる。
「今いっぱい勉強してるんだろ?政治家でも、弁護士でも、ピアニストでも医者でも!」
「……どれも無理な気しかしないけどな」
目を細めてため息を吐くと、眞野はケラケラと笑った。
「別に将来の目標を決めてる俺とか迫田が凄い訳でもないんだって!そこに向けて必死だし、お前はどの選択肢も諦めないように今を大事にしてるだろ?」
言われて考えていると、
「寒っみぃ。ファミレス行こうぜ」
そこには白い息を吐いた迫田が立っていた。
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