いちばんのみかた

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「お願い、しばらくの間でいいの。親は頼れないし、でも今の彼と別れたくないの。なんとか一緒に住めるように説得するから、お願いだから今だけ預かって」 「お前、犬や猫の子じゃあるまいし今だけ預かってってそりゃまずいだろ。俺だって仕事もあるし、そもそも子供の面倒なんかみたことないし」  目の前の、名前もうろ覚えの女と付き合っていた頃にはろくでもないごろつきだった俺も、今の社長に拾ってもらってからは心を入れ替えて仕事に励み、ようやくそれなりのポジションを任せてもらえるようになったところだ。かと言って、町工場に毛が生えたような小さな会社で、自分一人の食い扶持を稼ぐので精いっぱいだ。ガキの面倒なんか、まともに見れる訳がない。  ああだこうだ言い争う俺たちから少し離れたところで、ガキは退屈したのかしゃがみこんで地面のタイルの数を数え始めた。その姿を見て心がちくり、と痛む。両親が不仲だった自分の子供時代の思い出がいやでも蘇る。元来、頼まれたらいやとは言えない性格なのだ。若い頃に女をとっかえひっかえしていたのだって、自分が女好きというよりはいい寄られてノーと言えないうちにあっちやこっちで泥沼にはまっただけだ。
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