いちばんのみかた

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「仕方ねえな、半年だけだぞ」  気付いたら、そう言っていた。女は嬉しそうに頷く。なんと彼女は、うちから徒歩圏内の場所に住んでいた。なので、小学校はうちからも通える範囲の場所にあるという。子供は2年生で、名前は啓太。俺はマシンガンのようにぶっ放される情報を、必死に頭に叩き込んだ。  子供本人は、タイルの数を数えるのに飽きて、今度は空を見上げてぼうっとしている。先が思いやられそうだ。俺もつられて、透き通る青空を見上げた。子供の目に映る青と、俺の目に映る青は違うのだろうか。ふとそんなことを思うけれど、子供に話しかける言葉を持たない俺は、スン、とその疑問を腹の中に引っ込めた。
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