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S急便配送センター(12月23日午前0時10分)
流れてくる荷物の伝票に自分の名前を見つけたとき、男の手は止まった。それは一瞬のことで、すぐに次の荷物がベルトコンベアにのって流れてきてしまい、手に取ることはできなかった。S急便の集配センター。男はひと月ほど前からそこでバイトとして働いていて、荷物の仕分けをしていた。
「あれは、確かに俺の名前だった」
男は不思議に思った。自分に荷物などくるあてなどなかった。男は親類縁者とは縁を切っていたし、ネットで買い物もしてなかった。どこかで自分の個人情報がもれてイタズラでもされてるのかもしれない、そう思うと気持ち悪かった。
もしかしたら。
男はひとりだけ思い当たる人間がいた。だがすぐに首を横に振って、その考えを消した。深く考えている暇もなかった。荷物は次々と流れてきて、担当の荷物を仕分けるのに忙しかったからだ。今日は十二月二三日。クリスマスイブの一日前。通常の荷物とは別に、誰かが誰かのサンタクロースになろうと、プレゼントを買い、会えないひとに届けてほしいと宅配業者に頼む。その証拠に、期日指定の荷物がほとんどだ。きっとこの段ボールのなかは、鮮やかな緑色の包装紙に赤いリボンのついたプレゼントがおさまっているのだろう。
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