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1年後の12月23日
一年後、男は舞台にたっていた。
バイトをやめ、就職した。寝る前の一時間だけ執筆にあてた。休日をつかって稽古した。役者は素人同然で趣味の劇団だ。小さな劇場を借りて、一日だけの公演だった。なんということもない普通の話で、普通のお芝居だった。客はまばらだったが、招待席には、恋人の家族と、あの22号室の家族が座っていた。
「クリスマスイブイブのお忙しいところわざわざお越しいただきありがとうございます。明日はイブですね。よいクリスマスを」
そう言って男はずっと頭を下げた。
男の部屋と、恋人の部屋の郵便受けに「ご不在連絡票」が入れられた。
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