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サイレンがなってベルトコンベアが止まった。男は腰をのばした。ベルトコンベアは膝より低く、かがんで作業をしなければならない。作業場は高校の体育館ほどの大きさで、ベルトコンベアがU字型に走り、壁はなく、大型のトラックが並んで止まっている。
「逆走!」
社員が叫ぶ。ベルトコンベアが反対に回り始め。さっき仕訳けそこなった荷物がもう一度流れる。
「急げよ、朝がきちまうだろ。おれたちはサンタクロースなんだからな」
気のきいたことを言ったつもりなのか、社員は得意げにバイトたちをあおった。男はさっきのことはきっと見間違いかなにかだろうと自分に言い聞かせた。荷物を仕分け終われば、あとはトラックに積むだけだ。吹きさらしの作業場は冷える。腰が痛い。まだこの仕事には慣れていない。早く帰りたい。自分の名前が書いてある伝票のことは気になる。だが明日になれば自分の部屋に届くだろう。宅配便なのだから。
そう自分に言い聞かせた。
だが、その荷物は再びおとこの前にやってきた。男は自分の担当でもないのに、その段ボールを手に取り、足元に置いた。宛名は男の名前で、差出人はわかれた恋人からだった。
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