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関係はギスギスしていった。
男は脚本を書かなくなり、劇場の予約をキャンセルした。ちょっと休憩すれば面白いものが書けるようになると、恋人に説明したが、やることは近所のパチンコ屋に並ぶことだけだった。恋人は会社で、大きな仕事をまかされ、帰りが遅くなった。もはや、芝居を続けることはできなくなっていた。
劇団の解散とともにふたりはわかれた。男は三十歳で、女は二十九歳だった。
なんといって別れたのか、男は思い出せなかった。
どんな理由で、どんなものを元恋人が送ってくるのかわからなかった。いまさら恨み言でもあるまい。いや恨み言であるほうがありがたい。女性が一番輝くと世間的にいわれている二十代を、無駄にしてしまったのだ。男はずっと恋人にあやまりたいと思っていた。
だが、男のところにあの荷物が届くことはない。
男は女とわかれたあとしばらくして引越しをしたからだ。電話番号もかえた。あの荷物は確認したあとまたベルトコンベアに戻した。恋人の荷物は本人のもとに返される。
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