手紙

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 木月たかゆき様  たかゆき君。  お元気ですか? 今年も冬がやってきました。メリークリスマス。今年も届くかどうかわからないクリスマスプレゼントを送ります。安物だから気にしないでね。最近話題になったハンドタオルです。たかゆき君の好きなブラック。男の人ってなんで黒色が好きなんだろうね。  書けてますか? 脚本。  今年もあなたのお芝居をみることができませんでした。  あなたとはいろいろあったけど、同じ夢をみる同志というか、親友だから、あなたが復活する日をずっとずっと待ってます。  息子はとうとう幼稚園に通うようになりました。わたしが昔女優だったって知って、わたしのお芝居をみたいといいます。もう出ないのよというと残念な顔をします。主人が「やりたかったらやってもいいよ」って言ってくれますけど、わたしはあなたのつくる舞台がとても好きだったので、ほかのところに出ようとは思いません。だから主人には「どうしようかな」と言葉を濁しています。ほんとうのことを言ったら、嫉妬するから。主人は普通の会社員だからかな、わからないけれど、なんでも男と女の関係だと思ってしまうんです。  こんなことを書いといて、なんなんだけど、別にあなたが今充実していれば、いいんです。お芝居を見ることができなくても。あなたが充実さえしていれば、それはきっとあなたが新しいステージにあがっている証拠だし、それはきっとあなたの新しいお芝居なんだろうから。  最後にもう一度メリークリスマス。  木月たかゆきの一番のファンより                              佐々木恵子
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