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「兄ちゃん! どうして、わたしを助けたの! 死なせて、って頼んだよね。こんな体になって、手も足も動かない。何も話せない。好きなものも食べられない。そこまでして生きていたくない!」  幻聴だった。窓から差し込む白い光に目が眩んだ一瞬に、滑りこんできた。妹はベッドに寝ていた。目を閉じ、口が開いている。 「意識が戻ったと言っても、わずかな時間で、あとは寝ています」  と担当看護師が言った。 「触ってもいいですか?」  安中の問いに静かに頷き、看護師は病室を出て行った。安中はストールに腰を下ろし、鳴美の右手を握った。それは麻痺している方の手、当然握り返してはくれない。安中は握ったり緩めたりした。それが妹への刺激に、少しでもリハビリになれば、と願う。 「なあ、眼を開けてくれよ」  安中は語りかけた。 「さっきみたいに俺を責めてもいい。こんな体にして生かした俺を恨んでもいい。だから、眼をさましてくれよ」  責められるのは正直怖い。意識を回復した妹がいかに苦しむか。そして、それを支える自分がいかに苦しむか。想像すると、何という決断をしてしまったんだろうと悔いる。 「それでも、俺はお前を殺す決断ができなかった。弱虫だって怒っていいよ」  安中の胸ポケットのスマホが一音鳴った。前橋いつきからのメールだった。 ーーあの日はごめんなさい。妹さん大丈夫ですか? できること何かないですか?  安中は鼻で嗤った。何もない。俺たちのために会社ができることなんて、何もないんだ。俺は一人で、この罪と責任を背負って生きる。 《To be continued……》
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