キミと世界を救うこと。

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キミと世界を救うこと。

 永楽教。それは、祈る人には須らく、神様の声を聴くことのできる教祖様が救いの手を差し伸べ、天国へ導いてくれますよという宗教である。まあ、この概要は相当に端折っているわけだが――なんにせよ仏教やキリスト教と比べると、東洋の島国の、かなりマイナーな宗教であるのは間違いない。教祖が随分と若いことからもあり、カルト宗教呼ばわりされてしまうことも珍しくない。確かに本人が頼んでいなくても大量のお布施が集まってくるし、それを目的に教祖に寄ってくるアレな輩が絶えないのも事実であるけれど。  で、僕はといえば。その教祖の側近をしている、小坊主の一人である。坊主と言っても頭を丸めているわけでもなく、いわば企業の秘書官に近い立場で雇われているというだけだ。本来ならば最も敬虔で優秀な信者にやらせるべき立場であるところ、僕のような信心の欠片もない若造がやっている理由はただの一つ。教祖である彼、聖蓮(せいれん)と僕が、幼い頃からの幼馴染であるからだった。 『救ってください、導いてくださいって言う人ばっかりと一緒にいると、やっぱり息が詰まっちゃうんだよねえ』  聖蓮はにこにこと笑顔を貼りつけて、僕にそう言ったのだった。 『しかもみんな、教祖の俺には遠慮があるし、間違ったことをしてもだぁれもツッコミの一つもしてやくれやしない。それは組織にとって、きっとよくないことだと思うんだ。だから、君が僕の側近になってくれよ、宗吉(そうきち)』  彼がそんなことを言ったのには、理由がある。  今年で十八を迎える彼、聖蓮は――永楽教を作った人間でもなければ、望んで教祖という地位についた人間でもなかったからだ。
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