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「あのー、尚人さん。ディレクターに放送事故と怒られますので、座って自転車レースのお話をしませんか?」
「いえ、怜子さん。このミステリーが僕がここに来た理由であり、過酷なレースに勝てた秘密も隠されている。偶然か奇跡か?想像以上に完璧な展開ですよ」
尚人は最初の物哀しい微笑みを払拭し、晴れ渡った笑顔で怜子を励まし、立ったまま質問する。
「このレシピを何処で手に入れました?怜子さんが去年まで松本市の大学に通っていた事は知っています」
「はい。長野県の山奥で竜巻があり、大学の屋上で虹の架かる空を眺めていると、その紙片が風に舞って足元に不時着。それから大事に持っています」
椅子に座り直した怜子が肩を竦めて微笑み、尚人は眼鏡を手に取って近寄り、写真と手紙の答え合わせをした。
「これを掛けてくれますか?竜巻でログハウスの下敷きになって死んでしまった彼女の形見の眼鏡。亡くなった事を知った僕は自転車競技を引退し、すぐに日本に帰ったのですが、ログハウスを建て直している時に写真の入った封筒を発見した」
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