広子×色々(広子side)

10/12
前へ
/32ページ
次へ
そんな時。 一服を終えた篤が、店の中に戻って来た。 「成瀬さん。 なんかこの店の前、ヤクザみたいなんが囲んでますけど。 なんすか?あれ?」 それに答えたのは、成瀬ではなく二葉さんで。 「ああ。悪い。うちの組の奴らだ。 俺が他の組の奴から狙われねぇように、見張られてる」 「あ、二葉さん。お久しぶりです」 篤も、この二葉さんの事を知っているみたい。 「篤、お前、今何してんだ? 何もしてないならうちの組来ないか?」 「すみません。俺、今大学受験してて。 俺の母親、ずっと未婚の母だったけど、俺の父親ってのが急に現れて。 だから、その父親の籍に入って、それで、大学出ないといけなくて」 「は?なんだそれ?」 二葉さんは、首を傾げていて。 確かに、なんだそれ、って思うだろうな。 本当に、こんな感じで篤は大学に合格するのだろうか? 「せっかくだし、成瀬、お前嫁とキスしろ」 そう言い出したのは、二葉さんで。 「えー、マジですか?」 そう言いながらも、成瀬は私を引き寄せるように肩に腕を回して来る。 チュ、っと私の頬に成瀬の唇が触れた。 「は?口にしろよ。 しらけんだろ」 そう、二葉さんはふてくされていて。 「まあ、許してくださいよ」 成瀬がそう笑うと、二葉さんも固い表情を崩して笑っていた。
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!

225人が本棚に入れています
本棚に追加