走れ、俊

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 一番古い記憶は、幼稚園のクラスリレー。  僕たちのクラスは最下位からスタートしたものの、徐々に順位を上げ、2位まで追い上げて最後のランナーにバトンを渡した。  僕はアンカーでバトンを受け取ると、一目散に走り出した。  親の話によると、みるみる相手に追いつき、あっと言う間に追い抜いたらしい。  僕はそんなこと覚えちゃいない。ただ純粋に走るのが楽しくて、目一杯の力をぶつけただけだったから。  でも、ゴールテープを振り切った瞬間は、今でも鮮明に覚えている。あの時から、僕は虜になった。  躍動する身体。跳び跳ねる心。大歓声で喜ぶクラスのみんな。お父さんとお母さんたち。  走るということに、僕が取り憑かれた瞬間だった。
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