走れ、俊

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「ちょっと待ってよ、俊」  いつものように境内へ続く階段を駆け上がる僕の後方から、幼馴染みの新堂歩美が声をかけた。  階段の踊り場で一旦足を止め、後ろから僕を追ってくる歩美を待つ。  僕の名前は工藤俊介。だから歩美は僕のことを『俊』と呼ぶ。 「早く来いよ、歩美」  さほど息は上がってないので、僕は身体を動かしながら歩美を待った。歩美も1段飛ばしで階段を上がっているが、1歩がのろい。 「遅いなぁ、歩美は」 「俊が速すぎるんだよ」  やっと踊り場にたどり着いた歩美が、息を切らせて喋る。  僕が毎日境内へ続く階段を上ってると、歩美もそれを真似て上りだした。  そしていつしか、一緒に上ることが増え、今日も一緒に上っている。 「じゃ、先に行くよ」  僕はそう言い残し、先へと進んだ。上りたくて、身体がうずうずしていた。  みんなは僕のことを変な目で見てたけど、歩美だけは違った。  他の人からどう思われようが、別に関係なかった。ただ、歩美が一緒に上ってくれることは、少しだけ嬉しかった。  
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