走れ、俊

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 境内にたどり着き、いつものように町を見下ろす。遅れて歩美が駆け寄ってくる。 「まだまだ俊には勝てないなぁ」 「一生無理なんじゃ?」  膨れる歩美を無視して、僕は息を整える。  今日も町は穏やかに、その時間を進めていた。快晴で気候もよく、海は優しく波打っていた。 「ねぇ、今日は時間が早いからさ、行ってみない?」  息の整った歩美が言った。 「いや、あそこには行くなって、父さんと母さんが……」 「いいじゃん、少しくらい。ちょっと見るだけだよ」  歩美が言っているのは、境内の裏手から続く階段のことだ。  今上ってきた階段と違って整備されておらず、ひび割れて苔の生えた階段が続いている。おそらくもう何年も人は通ってないのだろう。木や草が鬱蒼と繁っていた。 『子供だけで行っては、絶対にダメ』  僕の両親は口酸っぱく、何度も僕に言っていた。興味はあったけど、やっぱり不気味で、僕はそっちに近づくことすらなかった。  だけど好奇心旺盛な歩美は違った。ここへくる度に、いつも僕に声をかけていた。
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