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「でさ、ここだけの話だけど私、初詣で何をお願いしたと思う?」
僕は「分からない」と、首を振るのみであった。
「初恋の人と結ばれるように、ってお願いしたの」
桃は少女時代のように目をキラキラとさせると、続けて言った。
「私、ブルーの事が好きだったんだよ。
子供の時から、ずっと。
だって、あのバカトリオを裏で回してるのって、昔からブルーだったじゃない」
言い終えた桃は、先程バッグに入れ戻したスマートフォンを僕の前に差し出した。
「LINE、繋がろ。取り敢えず第一歩としてさ」
桃の言葉に僕は頷くと、ジャケットのポケットからスマートフォンを取り出し、桃とLINEで繋がった。
電車がホームに滑り込んできた。
桃が東京に行く為の最終電車であり、この電車を乗り過ごすと、桃は東京に帰る事が出来なくなる。
「また、連絡するね」
桃は立ち上がると、電車へと向かう。
「実は言うとね、ウチのお店。
事務関係まとめてた人間が、去年の年末にやめちゃって困ってるのね。
もし、ブルーにその気があったら連絡してきてよ。
給料も、それなりに出させてもらうしさ」
地元のしがらみより、桃への愛情が大きく膨らんでいる僕は「前向きに検討するよ」と桃に返した。
電車の発車ベルが鳴った。
「そうだ、あまりにも皆でいるのが普通過ぎて、言うの忘れてたんだけど」
桃は電車に乗り込むと、振り返り言った。
「明けましておめでとう、今年もよろしくお願いします」
僕も「おめでとう」と返すと、ドアが閉まり、桃を乗せた電車はホームから走り去っていった。
電車の姿が見えなくなると、僕は矢継ぎ早に送られてくる桃からのLINEを見つめながら、胸中で呟いた。
おめでとう、桃。
そして、この素晴らしい一年の始まりをもたらしてくれた皆に、心からありがとう。
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