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正直に自分の胸の内を打ち明けると、僕は年の瀬に桃と再会する度に、「彼女への恋心」を募らせていた。
が、赤塚が桃との窓口になっている、という現状から、僕はこの切ない想いを桃に切り出せずにいた。
一方、桃の方も赤塚はともかく、僕や黄瀬は彼女の「恋愛対象」には入っていないようで、個別で連絡先を聞いてきたりといった行為は一切せず、
「気まぐれに地元に帰ってきて、幼なじみとバカ騒ぎするだけ」
という関係性を、僕らに対して取り続けていた。
──多分、桃は赤塚の事が好きだから、こんな頻繁に地元に帰ってくるんだろうなぁ。
僕がこの結論に至るには、さほど時間はかからなかった。
そして、それなら自分は桃が求める役者になろうと決意し、年の瀬に桃と再会する度に僕は自分を抑えて、黄瀬の天然や赤塚の暴走に突っ込みを入れる事で、場を仕切る役目に徹した。
「今年はどうする?」
僕が物思いに耽っていたその時、カレーを食べ終えた黄瀬が切り出す。
「また、0時過ぎまでメシ食った後、カラオケオールって流れになんの?」
「まぁ、そうだな。
店は俺が予約しておくしよ」
「よぉし、じゃあ今年も俺のラップを皆に聴いてもらうか!」
鼻息荒く宣言する赤塚に僕は苦笑すると、「毎回言うけど、お前のラップは念仏みたいなんだよ」と、おそらく黄瀬や桃も思っているであろう突っ込みを赤塚に対して入れた。
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