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両親の指示の元で行った大掃除もどうにか終わり、年始に備えた買い出しも済ませると、僕は赤塚と黄瀬と共に駅前で桃が来るのを待っていた。
「お待たせ。バカトリオ久しぶりー!」
電車の到着時間から5分が経とうとした頃、28歳となった桃は幼少期に遊んでいた口調そのままに僕らの前に姿を現した。
「桃、また綺麗になったなぁ!」
赤塚が白い歯を見せながら、手袋をつけている桃と握手をする。
「レッド、それ毎年言ってるじゃん」
桃は微笑すると、「早くお酒飲みてぇ」と口にしながら、赤塚と共に繁華街に向かって歩きだした。
「今年もさ、瓢箪亭で予約取ってるから、また年越しそば食ってからカラオケに行こうぜ。
俺、そこでとっておきのラップを歌うから」
赤塚が、10メートル程先にある件の店を指差す。
「毎年食べてるけど、あそこのおそば、本当美味しいもんね」
答えた桃は振り返ると、「予約したのってブルー?」と、後ろを歩く僕に目を向けた。
「あっ、俺。こういうのは俺の役目だから」
僕が小さく右手を上げると、桃は「ブルー、事務処理とかやらせたら完璧にこなしそうだね」と、小首をかしげながら笑った。
その桃のあざとさ溢れる仕草に、僕が心を奪われたのは言うまでもない。
が、僕はそれをおくびにも出さず「どうだろうなぁ」と場当たり的な返答をすると、桃らと共に店の暖簾をくぐった。
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