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伏し目がちに語る桃の言葉に、僕は返答する事が出来ず、おし黙った。
黄瀬は桃の言葉を信じきれないのか「俺は来年も桃と会えるのを願ってるよ」と言いながら鍋を頬張り、激情家の赤塚に至っては感極まったのか、いつの間にやら涙を流していた。
「今回は、いつまでこっちにいるんだ?」
しんみりとした空気の中、場の空気を変えたいと思った僕は顔を上げ、桃に尋ねる。
「今年は、3日までいようと思ってる。
朝まで三人といて初詣を済ませたら、元日は実家で一眠りして、その後仲のいい子に挨拶して、この辺を一回りして帰るよ。
もしかしたら、もうココに来る事が無くなるかもだしね」
「何時の電車に乗るつもり?」
「切符はまだ買ってないけど、ギリギリまでこの街にいて、夕方には帰るつもり」
「そうか!
なら、その日は俺達三人で桃の帰りを盛大に見送ってやらなきゃいけないな!」
ココで赤塚が涙を流しながら、僕と桃の会話に割って入ってくる。
が、桃は「レッド、それ恥ずかしいから本気でやめて」と、顔を赤らめながら断りを入れた。
1月3日に、赤塚や黄瀬がどういう行動を取るのかは分からない。
しかし、僕は仮に二人から声をかけられても、桃の見送りに行かないだろうな、と思った。
今生の別れを見送るとなれば、未練が残る。
なら、僕は桃といるこの楽しい時間を内包したまま、桃とサヨナラしようではないか、と。
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