【ショート・ショート】踏み出せ、一歩!

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「桃、今年も帰ってくるってよ」 パスポートみたく、Facebookの画面を僕ら二人に見せてきた赤塚は、「っしゃあ!」と、29歳とはとても思えない興奮した様子でガッツポーズをした。 「桃、東京で社長やってて忙しいって言ってたのに、ココ2~3年はホントよく帰ってくるよな」 青池こと僕は、赤塚の持つスマートフォンの液晶画面を見つめながら微笑する。 「じゃあさ、今年も桃を入れた四人で、年越し出来るって訳か」 500グラムのカツカレーを食べていた黄瀬は、口内の咀嚼物(そしゃくぶつ)を見せながら言葉を挟み込んでくる。 「喋んのなら、食ったモノを飲み込んでからにしろよ、黄瀬」 僕が黄瀬に突っ込みを入れていると、赤塚がスマートフォンのレンズを僕ら三人に対して向けてきた。 「今、全員でメシ食ってる画像、桃に送ろうぜ!」 赤塚の言葉で僕と黄瀬は身を寄せると、スマートフォンのレンズに目をやり、ダブルピースをした。 桃からは『バカトリオ、ホント変わらねぇwww』という返信が、すぐさま赤塚のスマートフォンに送り届けられてきた。 年齢こそ一つ下だが、高校卒業と同時に東京に行った尾崎桃とは、小学校時代よく下らないヒーローごっこをして遊んだ仲だ。 が、僕ら男三人が中学に入るかどうか、という辺りで桃の方が変に「男女」を意識したのか、その結果僕らと桃は自然と疎遠になっていった。 そんな桃が、どういう風の吹き回しか、僕らと再びコンタクトを取ってきたのは、3年前の年の瀬であった。
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