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『おめでとう』を君に。
『おめでとう』
その言葉を言えずに何年経ったんだろう。
僕らが大人になっても変わらずやってくるあの日。
二度と変えられないあの日のこと。
「ねえ、そっちはどう?上手くやってるのかな?」
1人誰もいない場所で、そう呟く。
ただ、側から見ると、変なやつだろうと思うが。
忘れてしまわないように、こうやって今日も会いにくる。
君のことも、あの日のことも、君がいなくなってからも。
あの日、僕らは4人で帰っていた。僕と、君と、2人の幼馴染と。
その日は君の誕生日で、これから誕生日会するって話だった。
そして、僕が君に告白するってこともひっそり話してた。
ちょうどその時だった。
交差点に差し掛かり、信号待ちをしていた僕らに、
横から車が突っ込んできた。
原因は、ながらスマホ。周りをよく見てなくて、事故ったらしい。
もちろん僕らも無事じゃなかった。
あの事故で、君と、1人の幼馴染が死んだ。
僕らも、無事じゃ済まされないほどの大怪我だった。
でも、もう幼馴染はいない。あの後、思い詰めて自殺をしてしまった。
また僕だけが生き残ってしまった。
ねえ、もう君はここにいないけど、この想いを伝えてもいいかな?
「…好きだったよ、あの時も、これからも」
「誕生日おめでとう、愛してるよ」
誰もいないお墓の前で、1人涙ながらにそう言った。
次は、2人で幸せな人生を歩みたいと願って。
__翌日__
『速報です。◯◯県△△市の墓地で、1人の男性の遺体が発見されました_」
これで、君に会いに行けるね。
また、出会えるといいな。
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