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太陽が頂点に昇る頃、ラジオ収録は終わった。
「お疲れ様。この後すぐ仕事入ってる?」
「いえ、入ってないです」
「じゃあ、昼飯奢るよ」
遥人先輩がにこっとして言った。
「いいんですか!?」
憧れの声優さんとご飯。このイベントは一体いくら積めば発生するものなのか。
近くのうどん屋さんに連れられ、中に入る。ピークを過ぎたのか客の数はまばらだった。
先輩はきつねうどん、私はかけうどんを注文する。
「橋本君はサインとか考えてる? 」
「いえ、まだ考えていないです」
「声優になったんだし、考えといた方がいいよ」
先輩はペンケースからペンを取り出し、箸袋にサラサラと書いた。
「俺のはこんな感じ」
「すごい、かっこいいですね」
今初めてみた、というリアクションをしたが、実は見たのは初めてではない。
「参考にして」
「え……」
何気ない素振りでサインの書かれた箸袋を渡してきた先輩に戸惑ってしまった。
Twitterの特定のツイートをリツイートすると、声優さんのサインが当たることがある。私は前世ではハルトのサイン欲しさに様々なツイートをリツイートしてきた。
そのサインが、今手の中にある。
「先輩! もっと自分のサインを大切にして下さい!」
私の反応に遥人先輩は終始首を傾げていた。
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